マンションの大規模修繕工事で追加費用がかかる原因は?対応方法や対策について
2025年7月14日


マンションの大規模修繕工事において、事前の調査だけでは把握できない劣化などが判明し、追加費用が発生するケースはそう珍しくありません。さらに昨今の物価高の影響で、値上げ交渉せざるを得ない施工会社も増えています。
しかし、予算が足りないからと言って工事をあきらめてしまうと、住環境が悪化するのはもちろん、安全性の低下や事故発生リスクの増大、資産価値の低下など、深刻な事態に陥りかねません。
そこで今回は、マンションの大規模修繕で見積もり時にはなかった追加費用が発生する原因はなにか?実際のトラブル事例や追加費用を抑える対策、追加工事・追加費用を要求された際の対応方法などをご紹介します。
無理なく安全に大規模修繕を進めるために、マンションの大規模修繕を控えているオーナー様や管理会社、管理組合のご担当者様は、ぜひ参考にご覧ください。
<目次>
大規模修繕で追加費用が発生する確率は?
マンションの大規模修繕では、工事が始まってから想定外の劣化や構造的な問題が見つかり、追加工事が必要になるケースが全体の約半数近くあると言われています。
特に築年数の経ったマンションでは、「図面と現況にズレがある」「過去の改修履歴が不明確」といった理由から、工事中に設計や工程を見直す必要が生じることも少なくありません。
こうしたトラブルに直面したとき、施工会社の提案にすぐ応じるのではなく、冷静に判断できるかどうかが、追加費用を抑えるカギとなります。そのため、追加費用が発生する原因やよくあるトラブル、契約方式、追加費用を請求された際の対処法などを事前に把握することが、納得のいく修繕工事にする上で大切だと言えるでしょう。
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追加費用が発生する主な原因とトラブル事例

それでは次に、大規模修繕で追加費用が発生する主な原因と、それにまつわるよくあるトラブル事例について詳しく見ていきましょう。
①:想定以上の老朽化・劣化が見つかる
大規模修繕では、外壁やバルコニー、屋上防水といった目に見える部分だけでなく、給排水管やガス設備、電気配線などの修繕も必要に応じて実施します。
このような設備は事前の目視調査では把握することができず、実際に作業が進む中で、深刻な劣化が見つかるケースが多く、劣化や破損の進行状況によっては設備更新工事が急きょ必要となり、大幅なコスト増につながることがあります。
特に2回目・3回目の大規模修繕ではよくあるトラブルとなっています。
<トラブル事例>
- ガス管からガス漏れが発覚し、緊急でガス配管交換が必要になった
- 共用部の給水管が腐食し、配管内に漏水が発生していたことが判明した
- 共用廊下の照明に不具合があり、一部の配線交換や機器更新が必要になった
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②:下地や構造部分の損傷が工事中に判明
外壁のタイルや塗装を剥がした際に、下地のモルタルが浮いていたり、鉄筋が腐食していたりと、コンクリート躯体の損傷が工事中に明らかになる場合があります。
これらの補修は安全性の観点からも必須対応となるため、当初の想定以上に費用がかさむ要因となります。劣化診断の段階でどこまで正確に見抜けるかが、追加工事の発生を左右する重要なポイントだと言えるでしょう。
<トラブル事例>
- 外壁のひび割れの内部が深刻な構造クラック(構造部分に生じるひび割れ)だったため、補修範囲が大幅に拡大
- 屋上防水層の下地が広範囲に劣化しており、防水工事のやり直しが必要に
- 下地に生じているひび割れの数が想定より多く、補修材や工数が大幅に増加
③:足場・仮設工事の難易度が高かった
マンションが、接道から奥まっている・敷地が狭い・隣接建物との距離が近い場合などは、足場の設置に想定以上の手間がかかることがあります。
地上からの搬入経路やクレーン作業の制限によって特殊な仮設工事が必要になると、その分の作業費やレンタル費用が加算されます。さらに、近隣住民との調整に時間がかかるケースでは、工期の延長にもつながりやすくなります。
<トラブル事例>
- 隣接建物との距離が狭く、敷地を越境して足場を組むため、事前に承諾書を取得する交渉が必要になった
- 接道幅が狭く、クレーン車が入れずに手運びでの資材搬入となり、作業効率が大幅に低下した
- 傾斜地に建つマンションで足場の水平調整や特殊な支持構造が必要だったため、工事費が想定を超えた
④:天候・自然災害の影響で工期が延長
雨天や台風、地震などの自然災害によって外部作業が中断され、工期が延びると、足場や仮設設備のレンタル期間も延長され、レンタル費用・人件費・管理費などの追加コストが発生するケースがあります。
特に梅雨や台風シーズンにかかる工事では、天候リスクをあらかじめ考慮したスケジュール設計が重要になります。
<トラブル事例>
- 長雨により外壁塗装作業の乾燥時間が確保できず、予定工程が遅延
- 台風によって仮設足場が一部倒壊し、補修と安全確認のために作業が一時中断
- 豪雨によって資材置き場が冠水し、資材の再手配が必要になった
⑤:設計や調査の見落としによる設計変更
設計段階での情報収集や現地調査が不十分だった場合、工事着手後に想定外の条件が判明し、設計や仕様の見直しが必要になることがあります。
例えば、配管ルートが図面に反映されていない場合や、以前に改修した箇所および改修内容が不明な場合には、施工中に設計のやり直しが発生することも。そして、これらのトラブルによる手戻り工事や資材の再発注が、追加費用の大きな原因になります。
<トラブル事例>
- 既存図面に記載されていた配管ルートと実際の施工状況が異なっていたため、設計を変更
- 過去の補修履歴が不明で工事中に想定外の補修材が発覚し、対応に時間がかかった
⑥:近隣とのトラブルや敷地条件の想定違い
工事中は騒音・振動・資材搬入など、周囲への影響も避けられません。近隣住民からのクレームにより、作業内容の調整やスケジュール変更が必要になる場合もあります。
また、敷地条件により仮設トイレや資材置き場の位置が変更されるなど、工事計画そのものに修正が生じるケースもあります。
<トラブル事例>
- 隣接住民からの騒音クレームにより、作業時間を制限され工期が延びた
- 資材搬入車両の通行に関して近隣から苦情があり、ルートを再設定する必要が生じた
- 仮設トイレの設置場所について周辺住民から反対があり、場所変更に対応した
追加費用が出やすい契約方式は?契約方式の種類

大規模修繕の契約方式にはいくつか種類があり、それぞれ追加費用の発生しやすさに差があります。ここでは、マンション大規模修繕での代表的な契約方式である「実数精算方式」と「責任数量方式(設計数量方式)」についてご紹介します。
実数精算方式とは?
実数精算方式とは、工事後に実際に使った材料や作業量に応じて費用を精算する契約方式です。
実際にかかった分だけ請求される点や、予定外の工事や数量変更にも柔軟に対応できる点から、マンションの大規模修繕ではこの実数精算方式を採用するケースが多い傾向にあります。
一方で、総額が不透明になりやすい点が、デメリットとしてあげられます。また、発注者側が現場の進捗をしっかり把握・管理できていないと、「ここまで費用がかかるとは思わなかった」と後々トラブルに発展しやすい側面もあります。
責任数量方式(設計数量方式)とは?
責任数量方式(設計数量方式)では、契約前に数量や単価を明確に定めたうえで契約し、それを超える追加分が発生した場合には、その都度発注者と協議して進める方式です。
追加費用を最小限に抑えやすいというメリットがある上、発注者としてもコスト管理がしやすく、予算オーバーのリスクを軽減できる契約形態といえます。
一方で、設計段階で数量を確定するので、調査が不十分だと追加費用が発生する可能性が。そのため、この方式を選ぶ際は事前に精度の高い調査が求められます。
契約時のポイント
どの契約方式であっても見積もり額以上の追加費用が発生する可能性があるので、「どちらにすべき」と断定できないのが実情ですが、いずれにしても、工事内容・施工範囲・精算方法を契約時にしっかり明記してもらうのがポイントです。
また、見積もりは複数の会社に依頼し、比較・検討することも大切です。
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追加費用を抑えるための対策と対応方法

大規模修繕において、追加費用をゼロにするのは難しくても、「想定内」に収めることは可能です。ここでは、追加費用を抑えるために押さえておきたい事前の対策や、実際の工事中に気をつけるべき管理のポイント、追加の工事を求められた際の対応方法などをご紹介します。
「予備費」を計画に含めておく
追加工事・追加費用を施工会社から求められると、その都度審議が必要になり、オーナーや管理会社の担当者にとって大きな負担となります。
このような予測しきれない事態にも冷静に対応できるよう、全体工事費の5〜10%程度を予備費としてあらかじめ予算に組み込んでおくと、スムーズに工事を進めることができます。
目安金額ですが、国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、2回目の大規模修繕工事の費用相場は6,000万~8,000万円がボリュームゾーンとなっています。つまり、その5〜10%として300万〜800万円は予備費として確保しておきたいところです。
しかし、通常の修繕積立金に加えて、さらに予備費までとなると、その負担は大きいもの。例えば、自治体の補助金・助成金を活用したり、金融機関の修繕ローンを利用したりといった方法も一つです。
「お金が足りないかも……」「想定よりもコストがかかりそう……」と予想できた時点で、すみやかに対策を考えておくのがポイントです。
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設計段階での劣化診断を徹底
見積もり精度を高め、追加費用を抑えるためには、外壁や設備の状態を正確に把握することが重要です。
表面的な調査に加え、赤外線調査・打診調査・配管内カメラ調査なども活用し、「見えない劣化」も事前調査で把握しておきましょう。調査結果をもとに工事範囲を精密に設計できれば、想定外の追加費用を減らすことができます。
第三者の専門家に相談する
工事内容や見積書の妥当性を判断するには、専門的な知識が必要です。
近年、工事業者を装った詐欺行為が横行している背景もあり、「想定外の劣化で追加費用が必要って言われたけど本当?」「言われるがまま応じていて大丈夫?」と、残念なことに、追加工事そのものの信頼性や必要性を疑わないといけない状況にあります。
このようなトラブルを回避するには、設計事務所やコンサルタントなど、利害関係のない第三者に依頼してチェックを受けることが望ましいと言えます。
詐欺行為はもちろん、過剰な工事や見落としも防ぎやすくなりますし、施工会社と管理者の間に第三者が入ることで、意見の食い違いがあっても冷静に対処できるようになります。
信頼できる業者選びと契約時の工夫
施工業者は、価格だけでなく、過去の実績・対応力・トラブル時の誠実さなどを総合的にチェックして選ぶことが大切です。
また、契約時には「追加工事が発生した場合は事前に協議・承認を得ること」といったルールを明記しておくと、後から一方的に費用を請求されるリスクが減らせます。不安がある場合は、契約書の内容についても第三者に確認してもらうと安心です。
追加費用は『想定しておく』ことが最大の対策
大規模修繕では、工事中に追加費用が発生するケースは決して珍しくありません。
追加費用の発生リスクを完全にゼロにすることは難しくても、「発生するもの」としてあらかじめ備えておくことが最大の対策になります。また、日頃からマンションを大切に使っていただくように、ルールなどを住民へ周知徹底することも大切です。
予備費の設定や第三者チェック、信頼できる施工会社の選定など、事前にできる準備を積み重ねて、トラブルや無駄な出費を防ぎましょう。
マンションの大規模修繕は白鳳にお任せください

私たち株式会社 白鳳は6,000件以上の大規模修繕に携わってきた実績を持ち、設計から施工まで一貫対応が可能な大規模修繕専門企業です。外壁補修やリフォーム、建材の張り替えの他にも、床や内装、タンク、配管、建具などの塗装も得意としています。
マンションは外部環境や経年劣化により、定期的なメンテナンスや修繕の必要が生じます。建物を長く安全に保つためにも、長期的に安心してお付き合いできる優良業者に依頼することが大切です。
ご相談は無料となっておりますので、大規模修繕・外壁塗装でお悩みのマンション管理会社様、管理組合の担当者様、オーナー様はぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
