【賃貸マンションの大規模修繕】コンサルタントの役割は?失敗しない選び方
2025年7月22日


賃貸マンション経営において、資産価値維持と入居者満足度向上のために、定期的な大規模修繕は欠かせません。そして、大規模修繕では「どの施工会社に頼むか」だけでなく、「誰に相談するか」も重要な要素であり、その相談役となるのがコンサルタントと呼ばれる課題解決の専門家です。
この記事では、マンションの大規模修繕でコンサルタントが果たす役割や、依頼するメリット、費用相場、コンサル会社の選び方についてわかりやすく解説します。大規模修繕を円滑に、失敗なく進めるためのヒントに、ぜひご覧ください。
<目次>
大規模修繕コンサルタントとは?
大規模修繕を扱うコンサルタントは、修繕工事の相談から、建物の調査・診断、修繕計画の立案、設計、施工会社の選定支援、工事の監理までを一貫して担う専門家です。オーナーが持つ疑問や不安、工事の課題を洗い出し、大規模修繕を成功に導きます。
大規模修繕の発注方式
大規模修繕の発注方式には、設計・工事監理・施工をすべて同じ施工会社に依頼する「責任施工方式(設計・施工一括方式)」や、大規模修繕コンサルタントを起用して進める「設計監理方式」があり、マンションの規模が大きくなるほど、コンサルタントを起用する「設計監理方式」が一般的になります。
大規模修繕コンサルタントの主な役割
大規模修繕コンサルタントの主な役割は、修繕計画を立てるための診断や調査、設計、施工会社の選定、工事期間中の監理、入居者対応などです。
【大規模修繕コンサルタントの主な役割】
- 劣化状況の診断
- 施工会社の選定
- 設計や工事内容の監理
- 入居者対応 など
ちなみに、国土交通省の「【PDF】令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について」によると、コンサルタント業務のうち、最も高い業務の割合は「工事監理」で、次いで「設計」「調査・診断」「施工会社選定への協力」となっています。
ここでは、それぞれの業務内容についてご紹介していきます。
【関連記事】マンションにおける大規模修繕の進め方は?準備から工事完了までの手順を解説
劣化状況の診断
大規模修繕工事は、はじめにマンションの劣化状況を把握するところから始まります。特に築年数が経過しているマンションでは、外壁や天井の劣化が予想以上に進行していたり、設備の交換が必要になったりと対応すべき箇所が多くなり、予算内で進めるために、修繕箇所の取捨選択が求められがちです。
大規模修繕コンサルタントは、どの部分がどの程度劣化しているか、また、いつ修繕を行うべきかを第三者の立場で判断し、修繕が必要な箇所や優先順位を明確にしていきます。
施工会社の選定
工事を担当する施工会社の選定も、コンサルタントの仕事のひとつです。
施工会社を選ぶ際、複数の会社から相見積もりを取るかと思いますが、施工会社ごとに見積もりの形式や表示項目が異なります。そのため、専門知識がないと見積もりの内容を公正に比較することが難しいものです。
大規模修繕コンサルタントは、専門的な知識で見積もりの内容を精査し、適切な修繕計画、適切な工事費用、そしてオーナーの意向に沿った施工会社選びをサポートします。
設計や工事内容の監理
大規模修繕工事では、工事計画を行う設計業務と、設計通りに工事が進行しているかをチェックする工事監理業務があります。
設計業務では、建物の劣化状況や今後の維持方針を踏まえ、どのような修繕を、どの範囲で行うかを具体的に計画します。マンションの場合、入居者が住み続けながらの工事となるため、居住性や安全面にも考慮した計画が求められます。例えば、共用廊下の塗装や防水工事なども、使用制限の影響を最小限に抑えなければなりません。
そして工事監理業務では、設計図や仕様書通りに工事が行われているかを現場で確認し、品質・工程・安全管理が適切に保たれているかを監督します。特に賃貸マンションでは、施工品質が物件の評価や入居率、家賃相場にも影響するため、資産価値を維持する観点からも非常に重要となります。
コンサルタントは、これらの業務をオーナーに代わって細かくチェックし、不具合や手抜き工事を未然に防ぐ役割を果たします。
入居者対応
大規模修繕中は足場の設置や騒音、共用部の使用制限など、日常生活にさまざまな影響が生じます。入居者とのトラブルを防ぎ、スムーズに工事を進めるためには、工事開始前の丁寧な説明と、工事中の継続的な情報共有が欠かせません。
入居者対応の一例
- 工事開始前の説明会
- 書面や掲示板でのこまめな情報共有
- クレーム対応 など
特に賃貸マンションの場合、入居者対応もマンション経営の重要な業務の一つです。何らかの問題が発生すると、大きなクレームや退去といったリスクにつながる恐れがあるからです。コンサルタントは、オーナーや施工会社との連携をはかり、入居者へのストレスを最小限に抑えることにも注力します。
大規模修繕コンサルタントの種類

大規模修繕のコンサルは、マンションの大規模修繕を専門に扱うコンサルタント会社に依頼するケースや、普段の維持管理を依頼しているマンションの管理会社に依頼するケース、一級建築事務所に依頼するケースがあります。
次に、それぞれの特徴やメリット、デメリットについてご紹介します。
大規模修繕専門のコンサルタント会社
大規模修繕の支援を専門に行っているコンサルタント会社は、大規模修繕工事の企画、設計、施工会社選定、施工監理までを一貫して専門的にコンサルティングする会社です。中立的な立場から大規模修繕プロジェクト全体をサポートします。
オーナーに専門的な知識がなくても、計画の立案から施工完了まで大規模修繕に関する作業全般をサポートしてくれるので、オーナーの時間的・精神的負担が大幅に軽減でき、さらに管理会社や施工会社とは異なる第三者の視点で、より客観的な大規模修繕計画を進めることができます。
ただし、このような大規模修繕専門のコンサルタント会社は大手のゼネコンや管理会社と比べると認知度が低く、実績や評判などの情報が得にくい側面があります。検討する際は複数社に提案を依頼し、比較するようにしましょう。
マンション管理会社
日頃からマンションの維持管理を担っている管理会社が、大規模修繕のサポートも行うケースがあります。建物の修繕履歴や日常の不具合、入居者の状況を把握しているため、それらの情報を踏まえた提案が可能ですし、何よりコンサル選びの手間がかからないのが大きなメリットといえます。
また、工事中の入居者対応や各種周知も、普段と同じ管理会社が窓口となるためスムーズに行えますし、大規模修繕後の維持管理まで見据えた提案が期待できます。
一方で、施工会社の選定において、管理会社のグループ会社もしくは提携している会社を優先的に紹介するなど、透明性や中立性に欠けるケースが時々あります。さらに、ある程度テンプレート化された修繕提案になる可能性もあるので、大規模修繕にこだわりがある場合は意見の食い違いが生じる可能性も。
このような事情から、セカンドオピニオンとして第三者の専門コンサルタントを併用するという選択肢も検討してみるのも良いでしょう。
【関連記事】マンションオーナー必見!賃貸管理会社の役割と選ぶ際のポイント
一級建築事務所
一級建築事務所は、建物の専門家として、独立した立場で設計・監理を行うことを専門としています。複雑な構造や意匠性の高い建物、または改修にこだわりがあるケースでは頼もしいパートナーとなります。
施工会社から完全に独立した立場であるため、特定の施工会社に偏ることなく公平な視点で修繕計画や施工会社の選定をサポートしてくれますし、建築基準法や関連法規、建築技術に関する深い知識を持っているのも、一級建築事務所に依頼するメリットの一つです。
デメリットとしては、建築や設計には強い反面、賃貸経営やコスト意識といったオーナー目線での提案はやや弱い場合も。また、一般的な建築設計を主としている事務所だと、大規模修繕の経験が少ないケースも考えられますので、大規模修繕の実績が豊富な事務所を選ぶことがポイントとなります。
なお、大規模修繕で一級建築士事務所をコンサルタントとして選ぶ場合、「プロポーザル方式」を採用する傾向があります。プロポーザル方式とは、簡単に言うと「提案内容で選ぶ方法」です。「うちのマンションをどう診断して、どんな大規模修繕計画を立てて、どんな風に進めていくのがベストだと考えますか?」という具体的な提案書(プロポーザル)を出してもらい、比較検討していきます。
コンサルタント費用の目安相場
一般的に、コンサルタント費用は工事費の5〜10%程度が相場とされます。例えば、100戸ほどの規模が大きいマンションの場合、工事費用が1億円程度となり、コンサル費用は500万円から1,000万円程度が目安となります。
【コンサルタント費用の目安相場】
マンションの規模 | 工事費用相場 | コンサル費用相場 |
---|---|---|
50戸 | 5,000万〜6,250万円 | 250万〜625万円 |
75戸 | 7,500万〜9,375万円 | 375万円 〜 937.5万円 |
100戸 | 1億〜1億2,500万円 | 500万円 〜 1,250万円 |
※国土交通省「【PDF】令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査について」を参考に1戸あたりの工事費100〜125万円で算出
ただし、コンサルタントの費用は業務範囲や物件の規模、状態によって変動します。あくまで目安として参考にご覧ください。
【関連記事】大規模修繕の費用はいくら?工事費用の相場や足りない場合の対処法について解説
大規模修繕コンサルタントを活用するメリット

コンサルタントを立てると費用が発生するため、特に戸数の少ない小規模マンションの場合はオーナー自身で工事を進めるケースも少なくありません。
短期的なキャッシュフローを考えると負担に感じるかもしれませんが、長期的な視点で見れば、コンサルタントを活用することでさまざまなメリットがあるのも確かです。
そこで次に、コンサルタントを活用するメリットについてご紹介します。
どのような工事が必要かを見極めてくれる
施工会社から過剰な工事や不要な工事を提案された時、専門知識がないと、本当に必要な工事かどうかを見極めるのは難しいもの。
コンサルタントは、マンションの構造や劣化具合、どこをどう修繕すれば建物の寿命が伸ばせるかなど、建物のことを知り尽くしたプロですので、本当に必要な工事だけを選定し、計画を立ててくれます。
また工事開始後も、「設計通りに施工が進んでいるか?」「手抜きされていないか?」なども、オーナーに代わり現場を厳しくチェックしてくれます。
【関連記事】大規模修繕工事の内容をわかりやすく解説!失敗しない進め方は
コストの妥当性を見極めてくれる
コンサルタントは、複数の施工会社から見積もりを取り、一つひとつ細かく比較検討します。市場価格より高く見積もられている場合は、オーナーに代わって値下げ交渉も実施します。
また、目先の工事費用だけでなく、次の大規模修繕まで費用がかからないように、建物の価値が上がるようにと、長い目で見てマンション経営にプラスになる提案も行ってくれます。
マンションオーナーの負担を軽減してくれる
大規模修繕において、工事そのものは施工会社に任せられますが、劣化状況の調査や修繕計画の策定、施工会社の選定、契約の締結、工事品質のチェックなど、オーナーがやるべきことは山ほどあります。コンサルタントを起用することで、これらの手間がかかる業務を引き取ってもらえるため、負担が大幅に軽減します。
また、何か問題が起きたり、入居者や近隣住民からクレームが発生したりしても、コンサルタントが専門家として的確なアドバイスや解決策を出してくれます。
中立的な立場でオーナーを守ってくれる
コンサルタント会社は、管理会社や施工会社と利害関係を持たず、中立的な立場でオーナーを守る役割も果たします。
例えば、不透明な費用を請求された場合、「この費用は何のお金か?」と各社に確認を取ってオーナーにわかりやすく説明してくれますし、工事の進捗状況についても透明性高く説明してくれます。
コンサルタントを選ぶ際のチェックポイント

コンサルタント選びを間違えると、不要な工事や不透明な業者選定など、トラブルにつながる可能性があります。
そこで最後に、信頼できるパートナーを見極めるために確認すべきポイントをご紹介します。
公平・中立性が保たれるか
コンサルティング会社がマンションや施工会社と何らかの利害関係がある場合、中立的な立場が損なわれることがあります。
特定の業者への誘導が見られたり、不要な工事を積極的に勧めてきたりするコンサルタントは要注意です。具体的には「施工会社はうちがお勧めするこの1社で大丈夫です」「相見積もりは不要ですよ」といった態度を取る場合は、特定の施工会社との癒着が考えられます。
通常、施工会社を選ぶ際は、まずオーナーとのヒアリングの機会が設けられ、3〜5社程度から相見積もりを取り、さらにその選定プロセスや選定基準もオーナーに開示します。施工会社に対しても、公平に説明やプレゼンテーションの機会を与えて、質疑応答の時間も設けます。
また、信頼できるコンサルタントは、契約書に業務内容や報酬額、支払い条件、責任範囲などを明確に記載します。オーナーにとって不利になる条項や、コンサルタントが特定の施工会社から利益を得るような仕組みになっていないことを、しっかりと確認しましょう。
オーナーの意向や方針に沿っているか
オーナーが「自ら主導して修繕計画を進めたい」のか、「専門家にある程度任せたい」のかによって、コンサルタントとの関わり方が変わります。そのため、オーナー自身がどの程度大規模修繕に関わりたいかを理解しておくことが大切です。
ただし、コンサルタントにすべてを丸投げするのはNG。施工会社と癒着し、競争のない談合を行うコンサルタントも存在するからです。重要な決定については、必ずオーナーが判断するように気をつけましょう。
また、賃貸マンションの修繕方針には、「とにかく機能維持を優先したい」「物件価値の向上を目指して近隣物件と差別化したい」「入居者の満足度を高めたい」など、さまざまな考え方があります。
オーナーの維持管理方針に理解を示し、寄り添った提案をしてくれるかも、コンサルタント選びの重要なチェックポイントの一つです。
類似ケース実績や賃貸マンション経営の知識があるか
コンサルタントを選ぶ際は、似た物件の修繕実績があるかも必ず確認しましょう。物件の構造や規模によって必要な知識・対応も異なるため、自身の物件と類似した事例をどれだけ手がけてきたかは、実力を見極めるうえでの大きな判断材料になります。
例えばタワーマンションと低層マンションでは、工事の難易度や費用、安全対策、工事期間、施工方法など、さまざまな違いがあります。保有するマンションがどのような特性を持っているのかを把握し、類似した大規模修繕工事の経験があるコンサルタントを選ぶと安心です。
加えて、賃貸マンションの大規模修繕では、入居者対応や収支のバランスなど、賃貸特有の配慮が求められます。それらの要素を考慮しながら、修繕計画を策定してくれるコンサルタントを選ぶと、マンション経営の強い味方となるでしょう。
【関連記事】マンション経営で失敗しやすい事例3選!知っておきたい対策方法とメンテナンスの重要性について
コンサルタント選びは慎重に!
コンサルタント選びは中立性や専門性が大切だとお伝えしましたが、さらに、オーナーや施工会社、その他関連会社との良好な関係性が築けるコミュニケーション能力も不可欠です。
専門的な言葉を並べ立てるだけでなく、わかりやすく噛み砕いて説明してくれるか?オーナーの要望や懸念にしっかりと耳を傾けてくれるか?といった点にも注意してみましょう。
マンションの大規模修繕は白鳳にお任せください

私たち株式会社 白鳳は6,000件以上の大規模修繕に携わってきた実績を持ち、設計から施工まで一貫対応が可能な大規模修繕専門企業です。外壁補修やリフォーム、建材の張り替えの他にも、床や内装、タンク、配管、建具などの塗装も得意としています。
マンションは外部環境や経年劣化により、定期的なメンテナンスや修繕の必要が生じます。建物を長く安全に保つためにも、長期的に安心してお付き合いできる優良業者に依頼することが大切です。
ご相談は無料となっておりますので、大規模修繕・外壁塗装でお悩みのマンション管理会社様、管理組合の担当者様、オーナー様はぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
