大規模修繕工事の費用を徹底解説!
2021年6月12日


マンションなどの物件を安全かつ長く維持するには、定期的な大規模修繕が不可欠です。
今回は大規模修繕を検討されている方へ費用の相場や修繕計画の要点を紹介します。
<目次>
まずは大規模修繕の内容を知ろう
大規模修繕工事は、建物の経年により生じる複数の劣化を、一定期間ごとに同時に修繕する工事です。 マンションには建築基準法に基づいている最低限の防水性や耐震性があります。
しかし、どれだけ優れた建築資材を使っている建物でも年数の経過による劣化は免れません。 修繕工事と似た言葉に改良工事と改修工事があります。どちらも建物の経年変化を修復するという点では同じです。
しかし、修繕工事が建築当時の水準まで機能を復元させることが目的なのに対し、改良工事と改修工事は建物のデザインや機能の向上を狙いとしている点が異なります。
また分譲マンションの場合、管理組合の主導で修繕がおこなわれることが一般的です。中でも足場をかけるような大がかりな工事を大規模修繕工事といいます。 具体的には外壁補修、防水工事、シーリング工事、鉄部の塗装などが挙げられます。
大規模修繕が必要な3つの理由
では、なぜマンションの大規模修繕が必要なのでしょうか?
住環境が悪化する
マンションにも寿命があり、建て替えまでの平均は60年といわれています。建物は風雨や日光の影響を受け、年月とともに少しずつ経年劣化が目立ってきます。
経年変化の影響をできるだけおさえて建物を長く安全に使うために大規模修繕が必須になってくるのです。 例えば、マンションの各設備は半永久的に利用できるものではありません。建物が経年変化すると、漏水や雨漏り、水道やトイレのつまりなどが起きやすくなります。
住環境が悪化することで快適にすごすことができないばかりか、日常生活に支障をきたす事態になりかねません。
住居の安全を確保する
大規模修繕工事の重要な目的として、経年変化によるコンクリート内部の劣化を抑制することもあります。
建物は経年変化によって、コンクリート内部の鉄筋がさびで強度が落ちてきます。
通常は空気に触れる建物の外側から内部に時間をかけて変化していきますが、ひびわれや防水層の亀裂から空気や水が建物に入り込み、劣化が進行することがあります。
鉄筋の劣化は建物の崩壊など重大な事故につながりかねないので、修繕が必要なのです。
マンションの資産価値が維持できる
大規模修繕工事を行うことはマンションの資産価値の低下を防ぐことにもなります。
経年劣化は放置すれば悪化して外観や快適性を損なうことにつながるでしょう。
また、防犯設備の強化やバリアフリー設備を取り入れることで住人が快適に生活できるようになり、資産価値が上がります。
大規模修繕を行うタイミング

ここまでマンションにおける大規模修繕工事の重要性について紹介しましたが、適切な時期に大規模修繕工事を行うことで、マンションの安全性を保つことができます。
では、工事を行うタイミングはどのような形がベストでしょうか。
大規模修繕は一般的に10年から15年に1回の頻度で行われる
大規模修繕は10年から15年に1回の頻度で行われるのが一般的です。
国土交通省のマンション大規模修繕工事に関する実態調査によると11年から15年に1度の頻度で実施しているマンションが多くなっています。
背景として、2008年から建築基準法の一部が改正され、建物の定期点検と調査基準が厳格化、外壁の前面打診調査は前回の工事から10年に1度行うことが義務化されたことがあります。 また、大規模修繕の対象である外壁工事、防水工事、給排水設備の耐久年数が10年から15年ほどであることも理由として挙げられます。
大規模修繕工事の費用の目安について
大規模修繕工事はマンションを対象とするのでかなり大きな費用が発生します。
金銭的な確認不足によるトラブルにも注意が必要です。
この項では、工事にかかる費用や注意点について見ていきましょう
1回の修繕費用はいくらかかる?
以下は、国土交通省発行の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(※)」による、戸あたりの修繕費用の統計結果です。(※外部サイトへ遷移します。)
戸あたり費用 | 割合 |
75万円~100万円 | 30.6% |
100万円~125万円 | 24.7% |
50 万円~75万円 | 13.8% |
参照:国土交通省 マンション大規模修繕工事による実態調査(※外部サイトへ遷移します。)
大規模修繕工事の1回の費用は分譲マンションの場合1戸当たり60~70万程度、賃貸マンションであれば30~50万程度が想定され、マンションの規模によっても変動します。
大規模修繕費はマンション購入時に大規模修繕計画に発生する費用を修繕積立金という形で提示されるのが一般的です。 工事にかかる費用は一括で回収するのではなく、修繕積立金として毎月徴収されます。
住人が家賃のように毎月一定の金額を収めることで修繕費の積立とする形です。
大規模修繕の費用算出について

大規模修繕の概算費用を見積もるには、建物の劣化診断をして劣化状況を調べる必要があります。
建物診断の実施によって大規模修繕を行う時期、調査結果をベースにした修繕仕様書案の作成、概算工事費用の算出ができます。
また、作成した調査結果で複数の業者に見積もりが可能です。
建物診断の方法は以下のようなものがあります。
診断方法 | どのように診断するのか |
通常の外壁診断 (手の届く範囲の打診調査も含む) | 目視や打診での調査、あるいは建物設計図が建築基準法との適合を調査 |
住人調査によるアンケート診断 | 居住者にアンケート調査を実施し、普段の生活できになっている点を管理委員会にかわりヒアリングする |
赤外線サーモグラフィーによる外壁診断 | 外壁にあるタイルやコンクリート部分に浮きがある場合熱がこもるためサーモグラフィーで探知する |
ドローンによる外壁診断 | 屋根の劣化や漏水など高所や危険で見えない場所をドローンによって調査する |
診断結果で大規模修繕の費用はどう変わる?
建物診断の結果、必要な工法が増えると大規模修繕にかかる費用も大きくなります。
例えばひび割れの場合、ひびが0.3mm以下か0.3mm以上かで工法が変わります。
0.3mm以下のひび割れの場合、微弾性樹脂や樹脂モルタルの塗布などで処理できます。
一方、0.3mm以上のひび割れになるとUカット+シーリング+樹脂モル成形+パターン復旧といった工法が必要です。
外壁塗料が劣化していると塗膜としての機能を果たせていない場合があるので優先的に修繕すべき場合もあります。
また、鉄部などの扉、階段手すりなどは約5年から6年で錆びはじめる部分のため、大規模修繕とは別にメンテナンス費用がかかってくることがあります。
修繕に必要な工法と費用の説明が明確であり、予算にあわせて柔軟に工事の提案をしてくれる業者選びが重要です。
修繕積立金の目安費用
大規模修繕工事の予算を作るために居住者が積み立てるのが、修繕積立金です。 積立金の予算が高すぎると居住者の負担が大きくなります。逆に予算が低すぎる場合、工事に必要な費用が出せなくなってしまい結果十分な工事ができなくなってしまうリスクがあります。
国土交通省 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(※)」によると、積立金は以下のように計算できます。 (※外部サイトへ遷移します。)
計算式 Y=(A×X(+B)
Y:購入予定のマンションの修繕積立金の額の目安
A:専有床面積あたりの修繕積立金の額
X:購入予定のマンションの専有床面積
B:機械式駐車場がある場合の加算額
積立金は入居時に管理会社などから住人に提示され、毎月一定額を納入する形をとることが多くなっています。
大規模修繕工事の見積もりをとる際のポイント
大規模修繕工事では、工事を発注する際に複数の業者に見積もりを取ることが多いです。
後々のトラブルを回避するためにも、見積もりを取る際は以下の点に注意しましょう。
- 明確で細かい明細があるかどうか、その明細は適切か
- 無駄にハイクオリティーな材料を使っていないか
- 補修工事に関して一式になっていないか
補修が必要な箇所に関しては調査を終えて足場を組んだ後にみつかる場合があり、また見積もり内容に過不足がないか注意が必要です。
足場を仮設したうえでしっかりと調査し、図面に落とし込んだ上で予定通り施工できるのか再見積もりが必要かを検討するのが重要です。 補修工事ははじめ見込みとして見積もりをもらい、調査後の再見積もりという形をとると、施工後のトラブルを防ぐことができます。
また、あまり予算がない場合値段が安い地域の専門業者などに受注するケースも考えられます。
しかし、あまりに値段が安い場合必要な工程などが省略されている、安全性に問題がある材料を使用している等のケースも考えられます。理由をしっかり確認して、リスクをふまえなくてはいけません。
大規模修繕工事の費用が足りない場合の対応

マンション大規模修繕工事を行う際には、事前の劣化診断によりおおよその金額が算出されます。
しかし、万が一費用が足りなかった場合どうすればいいのでしょうか?
管理費用の削減
日常的な管理を管理会社に委託しているマンションの場合、管理委託費を払う場合があります。
管理会社によって異なりますが、費用の相場として13,000円から15,000円がかかってきます。 管理委託費を削減することで大規模修繕費用に回す予算を増やせるという形です。
自治体などが実施する助成金を活用する
公共団体等の助成金を活用するという手段もあります。 各地方自治体が大規模修繕工事の助成金を実施することがあり、一定の条件を満たせば受給することができるのです。
国や公共団体、自治体など複数の組織が助成金を実地しているので、自分たちに最適な内容の助成金を事前調査しておくといいでしょう。
居住者から一時金を徴収する
修繕費用の不足が発生した場合、徴収可能な範囲で居住者から一時金を集めるという手段もあります。
一時金の徴収には管理組合の承認が必要になり、住民の金額負担が大きい場合反対される場合があります。
どうしても必要金額が徴収できない場合工事の延期という事態も起こりかねません。
ローンやリースを利用する
大規模修繕工事の費用が足りない場合、住宅支援機構やローン、リース会社等を利用するという手段もあります。
借入に際しては管理組合の承認が必要であり、返済の際には金利も発生するので積立金の増額なども検討が必要です。
積立金に関しては大きなお金が絡んでくるので、深刻なトラブルにつながる場合があります。
定期的な修繕計画の見直しの際などに、修繕積立金の金額が適正かを確認しておくことで、いざというときの金額不足を防ぐことができます。
大規模修繕費用をできるだけ安く抑える方法

マンション大規模修繕は金額も高額なため、できるだけ費用は抑えたいところですが、安全面などの兼ね合いがあるため頭を悩ませる部分です。 事前の準備をしっかり行うことで、いざというときのトラブルに備えることができます。
大規模修繕の工事費用を削減する
大規模修繕でコストを削減する際にまず考えられるのが、なるべく安い業者に受注するという方法です。
大手業者の場合、引き渡しの際の安心感がありますが、コスト面は高くなってきます。 一方、安さを売りにしている社歴の浅い会社の場合実績面が不安になる場合があります。
自分たちの優先事項を考えたうえで、条件を満たしてくれる業者に発注することが重要です。
そしてしっかりと費用にあった提案をして、20年30年先のことまで考え今何をすべきか提案してくれる業者であればベストといえます。
マンションの大規模修繕でのトラブルや困りごとはどう防ぐ?
マンション大規模修繕では様々なトラブルが想定されます。
事前に起こる可能性が高いトラブルを知っておくことで有事に対処しやすくなります。
修繕委員会を結成するときのトラブル
大規模修繕工事を実施する際に各マンションでは修繕委員会が組まれ、居住者からメンバーが募集されることが多いのですが、修繕委員が多すぎても少なすぎてもトラブルになります。
多くの場合、委員会メンバーは他の仕事をしているので、人数が2、3名など少ない場合は仕事が回しきれなくなる可能性が高いです。
そうなると管理会社やコンサルに丸投げとなってしまう場合があり、余分な経費が発生するのです。
逆に人数が多すぎても意見がまとまらない場合があります。居住者の年齢や性別によって価値観は大きく異なるので幅広い年齢層から公平に委員を選ぶことが重要です。
コンサルタントの談合に要注意

マンションによっては、専門のコンサルタント(設計会社)に大規模修繕工事を依頼するケースがあり、コンサルタント会社と施工会社の癒着談合によるトラブルが起こる場合があります。
コンサルタント会社と施工会社が癒着して施工費用を釣り上げることで、マージンを違法に多く取ろうとする行為です。
談合発生への対策としては、コンサルタント会社に丸投げしないことが重要です。 工事の前に複数の業者から見積もりをもらうことが多いため、その際に費用面は十二分に目を通し管理委員会側で把握しておくことが大切です。
マンションの大規模修繕の施工中トラブルとは
無事管理委員が決まり、費用内で業者も決まったところで工事中のトラブルも考えられます。
大規模修繕工事の前には、施工業者が説明会を開いて工事中の騒音などについて説明がなされるのが一般的です。
それでも、工事が始まると住人からのクレームは避けられません。
居住者からのクレーム
施工中はどうしても騒音や臭気、ホコリなどが発生するものです。
人によってにおいや音の感じ方は異なるので少しの振動でもクレームにつながる場合があります。
対策としては、騒音やニオイ、ホコリが発生する工事の前に居住者に対して説明するなどが有効です。
具体的には、臭気が発生する工程の時間を張り紙などで告知し、当該時間は住人に窓を閉めてもらう方法などがあります。 告知作業は施工業者の担当になるので、事前に業者に周知の徹底を伝えることが大切です。
マンション大規模修繕時の追加費用
大規模修繕工事では追加費用が発生することがあります。
それは仮設工事完了後に補修箇所が追加で発見され、再見積もりという形になる場合です。
当初の費用通りで済む場合もありますが、工夫次第で料金を下げられる補修箇所を提案してくれるような業者に頼むのが安心確実です。
例として、危害性の少ない床面の補修を削減するなど、細かな配慮と柔軟な対応をしてくれる業者を選ぶのがポイントになります。
マンション大規模修繕は白鳳にご相談を!

今回は、マンション大規模修繕にかかる費用について見てきました。
マンション大規模修繕に際しては、適切な人数かつ公平な人選で委員会を結成すること、予算の内訳について発注側で明確に把握すること、アフターケアまで考えてくれる業者を選ぶことが大切です。
マンションは建て替えまでに数十年という期間があります。その間複数回にわたって修繕が必要になるため、長期的なスパンでケアを考えてくれる優良業者に依頼することが、マンションを長く安全に保つことにつながります。
白鳳はお客様のご希望に寄り添った大規模修繕工事を実現します。
