マンション大規模修繕で損しない見積りの取り方は?適正価格を見抜くポイント
2025年7月23日


大規模修繕工事の費用は大きな負担となるため、複数の業者に見積りを依頼し、適正価格を見極める必要があります。
とはいえ、いざ見積りを取ろうとしても「どの業者に依頼すべきか」「条件はどう揃えればいいのか」など、迷う方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、大規模修繕における見積りの取り方から、適正価格を見極めるコツ、注意点までをわかりやすく解説します。さらに、よくあるトラブルを防ぐためのチェックポイントもご紹介します。
工事費を抑えつつ、品質の高い修繕を実現したいとお考えのオーナーや管理組合の方は、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
見積りの取り方①:工事費用の相場を把握する
見積りを取る前に、まずは工事費用の相場感を把握しておきましょう。
国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、工事回数別の工事金額は、1回目が「4,000万〜6,000万円」、2回目が「6,000万〜8,000万円」、3回目以上が「6,000万〜8,000万円」「1億〜1億5千万円」の割合がそれぞれ最も高い結果となっています。
工事回数 | 工事金額で最も多い費用帯 |
---|---|
1回目 | 4,000万〜6,000万円 |
2回目 | 6,000万〜8,000万円 |
3回目以上 | 6,000万〜8,000万円/1億〜1億5千万円 |
※工事金額に共通仮設費は含んでいません。
※工事内容及び工事定義は、マンションの規模や設備内容、劣化状況、立地条件で異なります。
参考:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
修繕費用は誰がどのように負担する?
賃貸マンションでは、修繕費用は基本的にオーナーの負担となります。資金が不足する場合や、手元資金を温存したい場合は、金融機関からの不動産担保ローンや事業融資などを活用します。
一方、分譲マンションでは、修繕積立金を使って費用をまかなうのが一般的です。不足が見込まれる場合は、一時金の徴収や積立金の増額など、追加の対策が必要になります。
また、耐震改修工事や省エネ化などが伴う大規模修繕だと、自治体によって補助金や助成金が用意されていることも。工事着工前に申請が必要なケースがほとんどですので、早い段階のうちから情報を集めておくと安心です。
ちなみに、修繕費用の支払いは、一般的に「着手金」「中間金」「完工金」の3回に分けて行われます。
【関連記事】賃貸マンションの大規模修繕費用が払えない…解決策は?
【関連記事】大規模修繕の費用はいくら?工事費用の相場や足りない場合の対処法について解説
見積りの取り方②:コンサルタントを選定する

コンサルタントの起用は必須ではありませんが、依頼するケースがほとんどです。
起用しないケースとして、たとえば、オーナー自身が大規模修繕に詳しい場合や、管理組合内に専門知識を持つ人がいる場合、小規模な補修工事のみを行う場合、あるいはコンサルティング業務も含めて管理会社に一任する場合などは、コンサルタントを起用せずに進めていくことが可能です。
ただ、第三者のコンサルタントによる中立的な視点と専門知識は、トラブルの回避や適正価格での高品質な工事の実現において、大きなメリットがあります。さらに、工事に関する判断や調整の手間が軽減できるため、オーナーや管理組合の負担を減らすことにもつながります。
関連記事:【賃貸マンションの大規模修繕】コンサルタントの役割は?失敗しない選び方
見積りの取り方③:書類を準備する

見積り作成を依頼する際、「建物診断報告書」「修繕計画書」「修繕仕様書」を提出するのが一般的です。
施工会社によって必須でない場合があったり、施工会社が診断してくれる場合もありますが、これらの書類を準備する過程で工事の内容や使用する材料、工期などが明確になりますし、同一条件で各施工会社から見積りを取ることができるので、準備しておいた方が良いでしょう。
建物診断報告書とは?
建物診断報告書は、外壁や屋上、共用部、設備などの現状を専門的な視点で詳しく調査・診断する書類です。ドローンや赤外線などの技術を活用して、より正確な劣化状況を把握し、修繕が必要な箇所を洗い出す場合もあります。
さらに、住民アンケートを実施して実際の使用感や不具合などを反映させると、より精度の高い報告書が作成できます。
修繕計画書とは?
修繕計画書は、建物診断の結果をもとに、「いつ」「どこを」「どのように」修繕するかを計画した書類です。大規模修繕の基本方針やコンセプトを示すほか、外壁・屋上・給排水・電気設備など各部位の修繕時期やサイクル、概算費用も明記します。
修繕仕様書(修繕設計書)とは?
修繕計画書が全体の「方針」を示すものであるのに対し、修繕仕様書(修繕設計書)は「今回の工事で実際に何を行うか」を具体的に示した指示書です。診断結果やアンケートを元に、使用する材料や施工方法、補修範囲などを箇所ごとに詳細に記載します。また、専門知識が必要になるため、コンサルタントに作成を依頼するのが一般的です。
なお、見積り比較の際は、この仕様書が共通の基準となります。
見積りの取り方④:施工会社を選定する

建物診断報告書や修繕計画書を作成し、具体的な修繕工事の範囲や内容が確定した段階で、見積りを依頼する施工会社をピックアップしていきます。
施工会社は「専門会社」「ゼネコン」「管理会社」が主流
大規模修繕工事を請け負う施工会社には、大きく分けて「専門会社」「ゼネコン(総合建設会社)」「管理会社のグループ会社・提携会社」の3タイプがあります。
大規模修繕専門会社は、文字通り大規模修繕に特化した施工会社ですので、マンション修繕に関する実績や専門知識、経験、高い技術力を持つのが特徴です。自社施工の割合が高い会社も多く、大手のゼネコンと比べて費用が抑えられたり、きめ細かな対応やアフターフォローが望めるのも専門会社のメリットといえます。
次にゼネコンですが、資金力があるので倒産リスクが少なく、耐震補強などの大規模修繕以外の付帯工事にも対応できるのが特徴です。実際に工事を行うのは下請け業者が多いため、費用が高くなる傾向はありますが、大規模なマンションや複雑な構造のマンションの修繕に向いています。
そして、管理会社のグループ会社や提携会社に依頼するメリットは、日頃からマンションの管理を行っているため、建物の状況や過去の修繕履歴などの連携がスムーズに進む点です。さらに、管理から修繕まで一貫して任せられるので、オーナーや管理組合の手間が省けますし、修繕後に何かしらの問題が発覚した際も、スピーディーに対応してもらえるでしょう。
ただし、競争原理が働きにくく、費用が高くなる可能性があったり、管理会社はオーナーの代理人であると同時に、工事を受注する側にもなるため、利益相反の可能性がないとは言い切れません。
基本的には大規模修繕専門会社を中心に、複数の業者に見積りを依頼するのが一般的です。コンサルタントの意見のほか、ランキング調査会社のデータや、他マンションの口コミなども、業者選定の参考になります。
競争入札で公募する方法も
公平性と透明性を重視する場合、「競争入札」による公募も選択肢の一つになります。
競争入札の実施は、コンサルタント会社や管理会社、設計事務所などに依頼することが多いですが、マンション業界の専門誌や住民からの紹介などを通じて業者を募ることも可能です。
公募で集まった複数の施工業者については、まず書類審査を行い、数社に絞り込みます。その後、現地調査を実施し、施工内容や条件を伝える「入札説明会」を開催。業者には、図面や仕様書などの資料を貸与し、質問にも対応します。条件を揃えた上で、より詳しい見積りの作成を依頼します。
緊急事態や専門的な技術が必要な時は
地震被害や深刻な雨漏りなど早急な対応が求められる緊急事態や、特殊な構造のマンションで、対応できる業者が限られている場合、あるいは特定の工法や技術を必要とする工事の場合は、複数の業者から見積りを取る「相見積り」ではなく、特定の業者に絞って見積りを依頼するケースがあります。中立性や公平性よりも、対応スピードや技術力が優先されるからです。
なお、こういった特定の一社に絞って契約を進める方法を「特命随意契約」といいます。
見積りの取り方⑤:各社に見積りを請求する

施工会社の候補が決まったら、いよいよ各社に見積りの提出を依頼します。見積りの依頼方法は主に下記の4パターンがあります。
- コンサルタントが代行する
- 一括見積りを利用する
- 業者に直接依頼する
- 競争入札で選定した業者に依頼する
コンサルタントが代行する
コンサルタントを起用する場合、業者との価格交渉も含めて、コンサルタントが各施工会社への見積り依頼を代行します。工事内容の妥当性や、見積り金額の適正性を公平にチェックすることで、不当な高額請求を防ぐ効果が期待できます。
一括見積りを利用する
近年増えているのが、インターネットを利用した「一括見積りサービス」の活用です。フォームに情報を入力するだけで、複数の業者から一括で見積りが取得できます。
複数社の見積りを比較することで相場感がつかみやすく、またどのような業者があるかを知るきっかけにはなりますが、紹介手数料が見積り金額に上乗せされている可能性や、登録後に営業電話が多数かかってくる可能性もある点には留意した方が良いでしょう。
このような事情から、一括見積りサービスはあくまで「入口」として捉えるのがポイントです。最終的には、見積内容や業者の実績、対応力などを含めて慎重に判断する必要があります。
業者に直接依頼する
選定した施工会社に対して、オーナーや管理組合が直接見積りを依頼するケースです。コンサルタントを起用していても、最終的な意思決定はオーナーや管理組合が行うべきであり、その責任を明確にするために、コンサルタントを介さないケースもあります。
直接業者とやり取りするので意思疎通がスムーズに進みやすく、費用が浮く分、総工事費が抑えられる可能性も高くなります。
競争入札で選定した業者に依頼する
競争入札方式で選定した業者には、詳細な修繕設計書や仕様書を渡し、それに基づいて正式な見積書を提出してもらいます。入札説明会後、各施工会社に対して、指定された期間内に、指定されたフォーマットで、修繕設計書に基づいた見積りを提出するよう依頼します。
見積りを依頼・比較する際のチェックポイント

最後に、大規模修繕の見積りを依頼する時のポイントについて解説します。
消費税込みの金額で依頼する
見積りを依頼する際は、消費税込みの金額で計算してもらうようにしましょう。
すべての見積りが税込で揃っていれば、一目で最終的な支払い総額が分かり、比較がしやすくなりますし、「税別だったとは知らなかった」といった誤解やトラブルを未然に防ぐことができます。
同じ条件下で相見積りを依頼する
複数社から見積りを取る場合は、すべての業者に対して同じ条件で依頼することが絶対条件です。
「A社は防水仕様が高グレードだった」「B社は仮設工事を含んでいなかった」というように、条件が異なれば、使う材料や工事の範囲も異なり、単純な金額比較ができなくなってしまいます。
また、たとえば、外壁塗装や防水工事のような、劣化の程度や下地処理の範囲で費用が大きく変動する工種では、条件が統一されていないと、金額に大きな差が生じてしまいます。
価格だけでなく総合的に評価する
単純に価格の安い・高いだけで判断せず、工法の提案内容やその根拠、使用する材料の品質やグレード、工程やスケジュール、アフターサービスの内容、瑕疵担保責任の有無や期間など、価格以外の要素も総合的にチェックしましょう。
その他の評価ポイント
- 単価のバラつき(足場・塗装・下地補修など)
- 仮設費や共通費の扱いの違い
- 単価ではなく「㎡単価×数量」で検証するとどうか
- 項目抜け(下地補修の記載漏れ等)が無いか
なお、これらの情報は業者から提出された見積りだけでなく、工事提案書にも記載されていることがあります。
【まとめ】見積りは同一条件・相見積りで!
今回はマンション大規模修繕の見積りの取り方についてご紹介しました。
見積りを取る際は、
- 同一条件での提案を依頼すること
- 最低でも3社以上の施工会社から見積りを取って価格競争を促すこと
- オーナーや管理組合が積極的に関与すること
これらの点が、重要なカギとなります。
また、大規模修繕は長期に渡るプロジェクトですので、価格や技術力に加えて、コミュニケーションの取りやすさはどうか?信頼できる担当者かどうか?など、人柄も大切です。
まずはさまざまな施工会社にコンタクトを取り、相性の良いパートナーを選定してくださいね。
マンションの大規模修繕は白鳳にお任せください

私たち株式会社 白鳳は6,000件以上の大規模修繕に携わってきた実績を持ち、設計から施工まで一貫対応が可能な大規模修繕専門企業です。外壁補修やリフォーム、建材の張り替えの他にも、床や内装、タンク、配管、建具などの塗装も得意としています。
マンションは外部環境や経年劣化により、定期的なメンテナンスや修繕の必要が生じます。建物を長く安全に保つためにも、長期的に安心してお付き合いできる優良業者に依頼することが大切です。
ご相談は無料となっておりますので、大規模修繕・外壁塗装でお悩みのマンション管理会社様、管理組合の担当者様、オーナー様はぜひ一度お気軽にお問い合わせください。
